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気づけば自分の時間がどこにも残っていない。そんな毎日に、心がすり減っていませんか。頼まれると断れず、手帳が予定でパンパンになる人は少なくありません。だから今日は、消えてしまった自分の時間を取り戻す方法を、ゆっくり一緒に考えていきます。
誰かのお願いに応えるたび、ほんの少し誇らしい気持ちにもなります。でも、その積み重ねが自分を追い込んでいることもあります。つまり、優しさが裏目に出てしまうのです。今回は、喫茶店でいつも穏やかに笑っているテキトー紳士に、力を抜くヒントをもらってきました。
相談タイム
その日、私は重たい手帳を抱えて、いつもの喫茶店のドアを押しました。窓際の席で、テキトー紳士がコーヒーをすすっています。私はため息まじりに、こぼれた本音を打ち明けました。
モヤ子「もう、自分の時間が一秒もないんです。頼まれると断れなくて、土日まで人の予定で埋まってて」
テキトー紳士「ほう。手帳、ずいぶん黒いですなあ。まぁ、ええじゃないですか、と言いたいとこですが」
モヤ子「先輩のランチに付き合って、同僚の引っ越しを手伝って、友達の愚痴も聞いて。気づいたら自分のための予定がゼロで」
テキトー紳士「それで、あなたはいつ休むんです?」
その一言に、私は黙り込みました。休むタイミングなんて、もう何ヶ月も考えていなかったのです。だって、頼まれたら応えるのが当たり前だと思っていました。
モヤ子「休む日って、言われてみると、思い出せなくて。常に何かに追われてる感じで」
テキトー紳士「追われとる、ねえ。誰に追われとるんです? 案外、自分自身かもしれませんよ」
はっとしました。私を追い立てていたのは、上司でも友達でもなかったのです。きっと、休んではいけないと思い込む、自分自身でした。
断れない自分を責めてしまう夜
モヤ子「断ったら悪い人みたいで。相手をがっかりさせたくないし、嫌われるのも怖くて」
テキトー紳士「なるほど。つまり、あなたは人に親切なんですなあ。それ自体は、ええことですよ」
モヤ子「でも、その親切で自分が潰れそうなんです。家に帰ってからも、断れなかった自分を責めて眠れなくて」
テキトー紳士は、ふっと笑って湯気の向こうを見ました。それから、のんびりした声でこう続けたのです。
テキトー紳士「あのね、予定が埋まってると、安心しません? 暇だと、なんだか落ち着かんでしょう」
言われてみれば、その通りでした。予定が空いていると、私は不安になるのです。だから無意識に、誰かのお願いで埋めていたのかもしれません。
予定が埋まる安心感に依存していた
モヤ子「確かに、空白の日があると、何かしなきゃって焦るんです。誰かに必要とされてないみたいで」
テキトー紳士「そこですわ。あなたは忙しさで、自分の価値を確かめとるんです。けど、それは危ない癖でしてね」
モヤ子「危ない癖、ですか」
テキトー紳士「ええ。だって、予定を埋めるために頼みを引き受けとったら、いつまでも自分の時間は戻ってきません」
胸の奥が、ちくりと痛みました。私は人のためだと思っていた行動で、実は自分の不安をごまかしていたのです。しかも、その代償が自分の時間でした。
モヤ子「じゃあ私、ずっと自分の首を絞めてたってことですか」
テキトー紳士「まぁ、そう深刻にならんでええです。だって、優しさの裏返しでもありますからね」
モヤ子「優しさ、ですか」
テキトー紳士「ええ。人を放っておけんのは、ええことです。ただ、その優しさを、自分にも少し向けてやればええんです」
その言葉が、じんわりと胸に染みました。私はずっと、他人にばかり優しくしていたのです。自分には、ずいぶん厳しかったのかもしれません。
テキトー紳士「まぁ、ええじゃないですか。気づいたんなら、もう半分は解決しとります。あとは、ちょっとずつ手放すだけ」
その脱力した声に、張りつめていた肩の力が、すっと抜けていきました。なんでも一人で抱え込んでしまう癖については、なんでも一人で抱え込んでしまう…人に頼れない性格を少しずつ変えていく方法でも触れています。
頼みを引き受けるたびに減っていくもの
モヤ子「でも、頼まれたことを断ると、自分が冷たい人間になった気がして」
テキトー紳士「ほう。冷たい、ねえ。じゃあ聞きますが、全部引き受けて、あなたは幸せですか」
モヤ子「正直、しんどいです。土日の予定を見るだけで、ぐったりしてて」
テキトー紳士「でしょう。頼みを引き受けるたびに、あなたの時間と元気が、ちょっとずつ減っとるんです」
たしかに、その通りでした。私は誰かに何かを足してあげるたびに、自分から何かを引いていたのです。だから、いつも空っぽな気がしていました。
テキトー紳士「コップの水と一緒ですわ。自分のコップが空なのに、人に注ぎ続けたら、いずれ枯れます」
モヤ子「自分のコップ、ずっと空っぽだったかもしれません」
テキトー紳士「だったら、まず自分のコップに水を入れる。それからでも、人に分ける順番は遅くありませんよ」
解決策
気持ちが少しほぐれたところで、テキトー紳士は具体的なコツを教えてくれました。どれも、肩肘張らずに今日から試せるものばかりです。さっそく順番に紹介していきます。
予定が埋まる安心感への依存に気づく
テキトー紳士「まずはね、自分が忙しさに安心しとることを、認めるんです。これが一番大事でしてね」
モヤ子「認めるだけで、いいんですか?」
テキトー紳士「ええ。だって、原因がわからんと、対策の打ちようがないでしょう」
私たちはつい、忙しい自分を頑張り屋だと思い込みます。でも、その忙しさが不安から来ているなら、話は別です。なぜなら、いくら予定を埋めても、根っこの不安は消えないからです。
テキトー紳士「試しに、手帳を眺めてみなはれ。その予定、本当に自分が望んだものですか?」
言われて見返すと、ほとんどが人からの頼みごとでした。自分が心から行きたい予定は、数えるほどしかありません。つまり、私の時間は他人のもので埋まっていたのです。
テキトー紳士「まずは、ひとつだけでええ。これは断ってもよかったな、という予定を見つけてみなはれ」
厚生労働省も、働く人の心の健康には、自分でコントロールできる感覚が大切だと示しています。実際に厚生労働省のこころの耳では、ストレスをため込まない工夫が紹介されています。だからこそ、まず気づくことが出発点になります。
気づきは、責めるためではありません。むしろ、自分をいたわるための第一歩です。だから、できなかった自分を責める必要はないのです。
モヤ子「断ってもよかった予定、たしかに何個かあります。気を遣いすぎてました」
テキトー紳士「それでええんです。気づけば、次は選べる。選べるって、自由ってことですよ」
私はこれまで、頼まれごとを選ぶ余地がないと思い込んでいました。でも本当は、引き受けるかどうかは私が決められたのです。つまり、自由はずっと私の手の中にありました。
テキトー紳士「ただね、急に全部断ろうとせんことです。それやと、反動でしんどくなりますからね」
モヤ子「少しずつ、でいいんですね」
テキトー紳士「ええ。十のうち、ひとつ断れたら上出来です。まぁ、ええじゃないですか、その調子で」
先に自分の予定を入れてしまう先取りブロック術
テキトー紳士「次はね、先に自分の予定を入れてしまうんです。私はこれを、先取りと呼んどります」
モヤ子「先取り、ですか。具体的にはどうすれば」
テキトー紳士「土曜の午後はカフェで読書、とか。そういう予定を、手帳に書いてしまうんですわ」
ポイントは、頼まれる前に書くことです。空白のままだと、人の予定がするりと入り込みます。しかし先に埋めておけば、その時間は自分のものになります。
モヤ子「でも、自分のための予定なんて、後回しにしがちで」
テキトー紳士「だからこそ、先に入れるんです。歯医者の予約と同じですよ。自分との約束も、立派な予定でしてね」
この発想は、私にとって新鮮でした。今まで自分の時間は、余ったら使うものだと思っていたのです。でも本当は、最初に確保すべきものでした。
テキトー紳士「先約は、自分との約束。誰かに頼まれても、その日は先約があります、と言えるでしょう」
嘘をつく必要はありません。だって、自分との約束も、まぎれもない先約だからです。つまり、罪悪感を持たずに断る口実が手に入るのです。
モヤ子「自分との約束を、先約って呼んでいいんですね。なんだか、勇気が出ます」
テキトー紳士「ええ。それにね、先取りした予定は、ちゃんと楽しみにすることです。義務にしたら、続きません」
モヤ子「楽しみ、ですか」
テキトー紳士「そう。土曜の午後が来るのが待ち遠しい、くらいでちょうどええ。予定は、ご褒美でもあるんです」
その発想は、私の心を軽くしました。自分の時間は、こなすタスクではないのです。むしろ、自分への小さなプレゼントでした。
だから私は、手帳の余白に、好きなことを書き込もうと決めました。映画、散歩、ただ眠るだけの午後。どれも、立派な先約です。
休日も仕事が頭を離れない人には、オンオフの切り替えも大切になります。休日も仕事のことが頭から離れない…オンオフを切り替えられない人の頭の休め方も、あわせて読んでみてください。
空白の時間こそ生産性を生むという発想の転換
テキトー紳士「あとね、空白の時間を、無駄だと思わんことです。ぼーっとする時間は、案外大事でしてね」
モヤ子「でも、何もしてないと、罪悪感が湧いてきて」
テキトー紳士「その罪悪感が、あなたを縛っとるんですわ。空白は、サボりじゃありません」
私は、予定が詰まっているほど充実していると信じていました。でも、それは思い込みだったのかもしれません。なぜなら、休まなければ良い仕事もできないからです。
テキトー紳士「考えてみなはれ。アイデアが浮かぶのは、机にかじりついとる時ですか?」
モヤ子「言われてみれば、お風呂とか、散歩中が多いかもしれません」
テキトー紳士「そうでしょう。頭が休んどる時に、ひらめくんです。空白こそが、次を生む土台でしてね」
つまり、空白の時間は無駄ではなく、投資なのです。心と頭が回復するから、次の活動に力が出ます。だから、空白を恐れる必要はありません。
モヤ子「予定がない日を、ダメな日だと思ってました。でも、違うんですね」
テキトー紳士「全然違います。むしろ、何もしない日があるから、人は人らしくいられるんですわ」
私は、隙間なく動き続けることを、ずっと正しさだと信じていました。けれど、それは自分を追い立てる考え方だったのです。だから、こんなにも疲れていました。
テキトー紳士「機械だって、休みなく動かしたら壊れます。人間が休まんで、もつわけがないでしょう」
モヤ子「空白を、堂々と入れていいんですね。なんだか、許された気持ちです」
テキトー紳士「許すも何も、もともとあなたの時間ですわ。誰の許可もいりません」
その言葉が、ふっと胸を温めました。私は、休むことにすら、誰かの許しを求めていたのです。でも、自分の時間の主人は、いつだって自分でした。
むしろ、空白がない毎日のほうが心配です。なぜなら、休めない人ほど、心が静かに疲れていくからです。明るいキャラを演じ続けて疲れた経験がある人は、いつも明るいキャラを演じてきたけどそろそろ限界がきた話にも、共感できるかもしれません。
テキトー紳士「だからね、何もしない予定を、堂々と入れるんです。それも立派な、自分の時間ですよ」
頼みを保留する『一旦持ち帰る』返事のテンプレ
テキトー紳士「最後にね、頼まれた時の返事を、決めておくんです。これがあると、ぐっと楽になりますよ」
モヤ子「とっさに断れないから、いつもその場で引き受けちゃうんです」
テキトー紳士「だから、即答せんでええんです。一旦持ち帰る、これを口癖にしなはれ」
具体的には、こう返します。確認して、また連絡しますね。たったこれだけで、考える時間が手に入ります。
モヤ子「その場で答えなくても、いいんですね」
テキトー紳士「もちろんです。手帳を見て、と一言添えればええ。失礼でも、なんでもありません」
即答すると、私たちはつい引き受けてしまいます。でも一拍おけば、冷静に判断できます。だから、保留は逃げではなく、賢い選択なのです。
モヤ子「その場で答えないと、相手を待たせて悪い気がしてたんです」
テキトー紳士「待たせる、いうても、半日や一日でしょう。それくらい、誰も気にしませんよ」
モヤ子「言われてみれば、たしかに大げさに考えてました」
テキトー紳士「人は、自分が思うほど、こちらを見とりません。だから、もっと気楽でええんです」
その言葉に、肩の荷が下りた気がしました。私は、相手の反応を勝手に重く想像していたのです。でも、現実はもっと、あっさりしているのかもしれません。
テキトー紳士「持ち帰ってから、無理なら断る。その日は先約がありまして、で十分でしてね」
断り文句も、シンプルでかまいません。長々と言い訳すると、かえって不自然になります。つまり、短く丁寧に伝えるのがコツです。
モヤ子「一旦持ち帰る、その日は先約があります。これなら、私にも言えそうです」
テキトー紳士「ええ調子ですわ。断るのは、相手を嫌うことじゃありません。自分を大事にすることですよ」
飲み会の誘いが苦痛な人にも、この保留の返事は役立ちます。職場の飲み会が苦痛でたまらない…断れない・帰れない空気をオカンに相談したら楽になったでは、別の角度から断り方を考えています。
まとめ
コーヒーを飲み終えるころには、抱えていた手帳が、少し軽く感じられました。テキトー紳士の言葉が、ふわりと心に残っています。
モヤ子「忙しさで、自分の価値を測らなくてもいいんですね」
テキトー紳士「そうですわ。あなたの価値は、予定の数では決まりません。何もしとらん日のあなたも、ちゃんと価値があります」
モヤ子「何もしてない私にも、価値がある。その言葉、ずっと覚えておきたいです」
テキトー紳士「覚えとってください。そして、しんどくなったら、また来なはれ。コーヒー、淹れときますから」
今日教わったことは、どれもすぐ試せます。まず、予定が埋まる安心感に気づくこと。次に、自分の予定を先取りで入れること。
そして、空白の時間を投資だと考え直すこと。最後に、頼まれたら一旦持ち帰ること。この四つを、少しずつ生活に取り入れていきます。
テキトー紳士「焦らんでええんです。全部いっぺんにやろうとせんと、ひとつずつ。まぁ、ええじゃないですか」
自分の時間は、誰かが返してくれるものではありません。自分で、そっと取り戻していくものです。だから今日から、小さな先約をひとつ、手帳に書いてみようと思います。
頼まれごとで埋まっていた手帳に、自分のための余白を。その余白が、きっと明日の私を支えてくれるはずです。
よくある質問FAQ
先約があると断ると、嘘をついている気がして罪悪感があります
その気持ちは、とても自然なものです。でも、自分との約束も、まぎれもない立派な先約です。読書やひとりの時間も、あなたが大切にすべき予定だからです。だから、嘘ではありません。むしろ、自分を守るための正直な選択だと考えてみてください。罪悪感が湧いたら、その時間が次の元気を作ると思い出すと、少し楽になります。さらに、自分を満たした人ほど、結局は周りにも優しくできます。だから、自分の時間を守ることは、巡り巡って誰かのためにもなるのです。
一旦持ち帰ると言っても、結局断れず引き受けてしまいます
最初はそうなりがちです。だからこそ、持ち帰る目的を決めておきましょう。それは、断るためではなく、冷静に考えるためです。手帳を見て、すでに自分の予定が入っていれば、無理だと判断しやすくなります。それでも迷うときは、その日は先約があります、と短く返す練習から始めてください。少しずつで大丈夫です。最初の一回が、いちばん勇気がいります。でも、一度断れた経験は、必ず次の自信になります。だから、完璧を目指さず、できた日を数えていきましょう。
自分の予定を先取りしても、結局その時間に頼まれて崩れてしまいます
先取りした予定を、自分でも軽く見てしまうと崩れやすくなります。だから、自分との約束も他人との約束と同じ重さだと考えてください。歯医者の予約をキャンセルしないのと、同じ感覚です。もし頼まれても、その時間は予定がありまして、と伝えて大丈夫です。一度守れると、自信がつきます。すると、次からは自然と守れるようになっていきます。それでも崩れてしまった日は、自分を責めないでください。また次の週に、新しい先約を入れればいいだけです。大切なのは、続けることです。