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「もう無理」って思ったのは、月曜日の朝だった。
普通に起きて、普通に支度して、普通に電車に乗って、普通に出社したのに。会社のビルの前に立ったとき、なぜかその場所から一歩も動けなくなってしまった。足がすくむ、とかそういう劇的な感じじゃない。ただただ「もう無理かも」という感覚が、ぼんやりと全身を覆っていた。
わたし(モヤ子)はずっと頑張ってきた。仕事では「いい仕事をしなきゃ」と残業して、プライベートでは「自分磨きしなきゃ」と資格の勉強をして、休日は「充実させなきゃ」と予定を詰め込んで。SNSを見ては「この人みたいにならなきゃ」と焦って、誰かに誘われれば「行かなきゃ」と無理してでも顔を出して。気づいたら、「ねばならない」だらけの毎日だった。
心が疲れた、って思ったのは最近のことじゃない。じわじわと、じわじわと、じょじょに燃料が切れていく感じだった。「今日も疲れた」「また明日も頑張らないと」を繰り返すうちに、何かが空っぽになってきた。笑えない日が増えた。好きだったことが楽しくなくなった。友達からのLINEを返すのがしんどくなった。
心が疲れたって、どこまでが普通でどこからが異常なんだろう。「みんな疲れてる中でもちゃんとやってる。わたしだけ弱い。」そう思いながら、なんとか踏ん張っていた。
そんなある日、行きつけの喫茶店でテキトー紳士と話した。テキトー紳士は毎日その喫茶店に来ているおじさまで、いつもコーヒー一杯でのんびりしている。何が職業なのかよくわからないけど、なんか人生をうまく生きてる感じのする人で。気づいたらなんとなく話すようになっていた。その日わたしは「なんか最近、心が疲れてて」と話し始めた。「ああ、聞くよ」とテキトー紳士はコーヒーをすすりながら言った。
心が疲れたことをテキトー紳士に話してみた
モヤ子:「なんか最近、心が疲れてるっていうか。毎日頑張ってるんだけど、なんか空っぽな感じがして。「もう無理」ってなることが増えてきた。」
テキトー紳士:「ああ、それはね、休めって言われてるんだよ。体が。心が。「もう無理」ってなるのは、「限界だよ」というサインだから。そのサインを無視して頑張り続けてたら、どこかでガクッといく。まあ、人間そんなもんだよ。」
モヤ子:「でも、頑張らないと置いていかれそうで怖くて。みんな頑張ってるのに、わたしだけ休んでいいのかなって思って。」
テキトー紳士:「「みんな」って誰のこと?実際に周りの全員を見たの?(笑)みんながみんな頑張ってるわけじゃないよ。うまく手を抜いてる人もいるし、疲れて休んでる人もいる。「みんな頑張ってる」って思い込みが、自分を追い詰めてることがけっこう多いんだよね。」
モヤ子:「確かに、みんなの内側なんて見えてないか……。でも、なんか「自分だけサボってる」みたいで罪悪感があって。」
テキトー紳士:「罪悪感、か。それって「休んだら負け」みたいな考え方から来てるんじゃないかな。休息って、サボることじゃないんだよ。疲れた車にはガソリンを入れないといけないでしょ。心が疲れたときの休息は、ガソリンを補充することと同じ。補充しないで走り続けたら、途中で止まるよ。」
モヤ子:「休息がガソリン補充……なんかそう言われると、休むのが必要なことに思えてくる。でも、休み方がわからなくて。何もしないと「時間を無駄にしてる」って焦ってきちゃう。」
テキトー紳士:「ああ、それはね、「何かをしていないと価値がない」って思い込んでるんだよ。ずっとそう思って生きてきたんじゃないかな。でも、何もしないことにも価値があるんだよ。ぼーっとすることも、ただお茶を飲むことも、空を見ることも。「有意義な時間」の定義が狭すぎるんだよ、君の場合は。」
モヤ子:「有意義な時間の定義……確かに、何かを「した」「できた」でしか時間を評価してなかったかも。」
テキトー紳士:「そうでしょ。「今日何かをした」「今日一歩前に進んだ」でしか自分を肯定できないとね、疲れるんだよ。ただ生きてるだけで、十分頑張ってるんだからさ。」
モヤ子:「ただ生きてるだけで頑張ってる……なんかそれ聞いて、ちょっと泣きそうになった。」
テキトー紳士:「ふふ。まあ、君は頑張りすぎたんだよ。頑張ることが悪いんじゃなくて、休まずに頑張り続けたのが問題。スポーツ選手だって、練習と休養を繰り返して強くなるでしょ。休みなく練習し続けたら怪我するんだよ。人間の心も同じでさ、休息なしに動き続けたら壊れる。」
モヤ子:「心が疲れたのは、頑張りすぎたから……。でも「頑張りすぎ」って、自分ではわからないんだよね。気づいたら限界になってた、みたいな感じで。」
テキトー紳士:「そうだねえ。わかりにくいんだよ、心の疲れって。体の疲れは「足が痛い」「眠い」と見えやすいんだけど、心が疲れたサインは気づきにくい。「なんか最近楽しくない」「ちょっとしたことでイライラする」「やる気が出ない」……そういう小さいサインがあるんだよね。君はそのサインを見てた?」
モヤ子:「……見てなかったかも。「疲れてるな」って思っても、「でも頑張らなきゃ」って打ち消してた。」
テキトー紳士:「だよね。「疲れた」というサインを無視して頑張り続けるのが美徳、みたいな空気あるからね。でもそれって体で言えば、骨折してるのに「でも走らなきゃ」って言ってるのと同じだよ。心が疲れたというサインは、しっかり受け取ってあげないといけない。」
モヤ子:「骨折してるのに走り続けてたのか……。それは確かにダメだよね。」
テキトー紳士:「うん。まあ、気づいたときが変えどき、ってことだよ。で、具体的に何が一番しんどかった?仕事?プライベート?」
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モヤ子:「う〜ん……なんか全部、かな。仕事でも「もっとうまくやらなきゃ」ってなるし、帰ったら帰ったで「勉強しなきゃ」「自分磨きしなきゃ」ってなるし、休日は休日で「有意義に過ごさなきゃ」って感じで。ずっと「〜しなきゃ」なんだよね。」
テキトー紳士:「ああ、「ねばならない」人間ね(笑)。それはしんどいよ。「ねばならない」って言葉って、すごく重いんだよね。「したい」はエネルギーが湧いてくるけど、「しなきゃ」は義務感だから消耗するの。君の毎日、「したい」はどのくらいあった?」
モヤ子:「「したい」……あんまりなかったかも。「楽しいから勉強してる」というより「やらなきゃいけないから勉強してる」みたいな感じで。」
テキトー紳士:「そりゃあ心が疲れるよ。「やりたいこと」がなくて、「やらなきゃいけないこと」だけで毎日動かされてたら、エンジンが焼き切れるよ。好きなものって、なんかある?今でも「これは好き」って思えること。」
モヤ子:「うーん……コーヒー飲むのは好きかな。本を読むのも好きだったんだけど、最近全然読めてない。」
テキトー紳士:「コーヒー、いいじゃない(笑)。じゃあまず、今日は仕事終わりにゆっくりコーヒーを飲んでみなよ。それだけでいい。予定も詰めず、スマホも見ず、ただコーヒーを飲む。それが今日の「したいこと」にしてみな。」
モヤ子:「それだけでいいの?」
テキトー紳士:「それだけでいいんだよ。「大きなことをしなきゃ」って思い込みも、心が疲れる原因のひとつだよ。小さい「好き」を積み重ねることが、心の回復には必要なの。」
モヤ子:「小さい「好き」を積み重ねる……。なんかそれだったら続けられそう。」
テキトー紳士:「そうでしょ。あとさ、「60点でいい」って考えてみたらどうかな。なんでも100点を目指そうとするから、できなかったときに落ち込む。最初から60点を目指してたら、60点取れたら「よし!」ってなるし、80点取れたら「ラッキー!」ってなる。完璧を目指さないことで、心が疲れるのを防げるんだよ。」
モヤ子:「60点でいい……なんかそれ、聞くだけで少し楽になる気がする。」
テキトー紳士:「でしょ。頑張ることが悪いとは言わないけど、「頑張らない日があっていい」「60点の日があっていい」「何もできない日があっていい」、そういう余白を作ることが大事なんだよ。余白がないと、追い詰められるからね。」
モヤ子:「余白……最近、全然なかったな。スケジュール帳もいつもぎっしり埋まってるし。」
テキトー紳士:「あえて空白を作ってみなよ。「何もしない時間」を意図的にスケジュールに入れる。最初は「もったいない」って感じるかもしれないけど、その空白がね、心が疲れたときの緩衝材になるんだよ。ぎっしりのスケジュールって、一個崩れたら全部崩れるから怖いんだよね。」
モヤ子:「確かに。ゆとりがないから、ちょっとしたことでも「もう無理」ってなる。余白があれば、多少ズレても大丈夫なんだね。」
テキトー紳士:「そういうこと。人生ってね、適当でいいんだよ。完璧な人間なんていないし、全部うまくやれる人間もいない。「できた」「できなかった」じゃなくて、「まあ今日もなんとかやったな」くらいの感覚でいいんだよ。」
モヤ子:「「まあなんとかやったな」……なんかそれ、すごく温かい言葉に聞こえる。」
テキトー紳士:「温かいって言ってくれると嬉しいけど、これが普通なんだよ(笑)。自分に厳しくしすぎないこと。心が疲れたなと思ったら、ちゃんと休むこと。それだけで、ずいぶん違うよ。」
モヤ子:「ありがとうございます。なんか話してたら、さっきより少し楽になった。」
テキトー紳士:「よかったよかった。まあ、コーヒーでも飲んでゆっくりしなよ。世界はね、君が思ってるほど急いでないから。」
心が疲れたと感じたときに試してほしい4つのこと
テキトー紳士との会話からみえてきた「心が疲れたときの対処法」を4つにまとめてみた。
心が疲れたサインを見逃さないようにしよう
心の疲れは体の疲れより気づきにくい。足が痛い、眠い、という体のサインは見えやすいけど、心が疲れたサインは「なんかちょっと違う」程度の感覚で始まることが多い。そのサインを見逃さないようにすることが、「もう無理」な状態になる前に立て直すためには大事。
心が疲れているサインとして多いのは「最近楽しいと感じることが減った」「ちょっとしたことでイライラしやすくなった」「好きなことをしても楽しくない」「なんとなく憂うつな気分が続く」「やる気が出ない日が続く」「人に会うのがしんどい」など。どれも単独だと「疲れてるだけかな」と流してしまいがちだけど、いくつかが重なっていたり、それが何日も続いていたりするなら、心が疲れたサインとして受け取ってあげてほしい。
大事なのは「疲れた」というサインを「でも頑張らなきゃ」で打ち消さないこと。骨折してるのに「走らなきゃ」と走り続けるのと同じで、心が疲れたサインを無視して頑張り続けると、どこかでガクッといってしまう。サインを受け取ったら、まず「今の自分、しんどいんだな」と認めることから始めよう。週に1回、5分でいいから「最近楽しかったことあったか」「イライラしやすくなってないか」「ちゃんと眠れてるか」の3つを確認するだけでいい。心が疲れた状態を早めにキャッチすることが、重くなる前に対処するための鍵になる。
「頑張らない日」を意図的にスケジュールに入れてみよう
心が疲れる大きな原因のひとつが、休息のない毎日。仕事でも自己研鑽でもプライベートでも「〜しなきゃ」が続いていると、じわじわと消耗していく。テキトー紳士が言ってたように、「余白」がないと心の疲れが溜まっていく一方になる。
おすすめは「何もしない時間」を意図的にスケジュールに入れること。最初は「もったいない」「無駄な時間」って感じるかもしれないけど、その空白が心の回復に必要なバッファになる。ぎっしりのスケジュールは一つ崩れたら全部崩れるけど、余白があると少しズレても立て直せる。「頑張らない日」の過ごし方は、何でもいい。ただゴロゴロする、好きな映画を見る、ぼーっとコーヒーを飲む、散歩をする……「有意義か」どうかは関係ない。「自分が気持ちよく過ごせるか」だけを基準にすること。
「休んだら遅れをとる」という感覚があるかもしれないけど、心が疲れたまま動き続けるほうが、長い目で見ると遅れをとる。まずは週に半日だけでも「完全に何もしない時間」を作ってみよう。それが心の疲れを回復させる一番の特効薬になる。心が疲れていると感じているなら、「頑張らない日を作ること」を最優先にしてみてほしい。
「60点でいい」と決めて、完璧主義をゆるめてみよう
心が疲れる人に多いのが「完璧主義」の傾向。100点を目指すから、80点でも「まだ足りない」ってなる。できなかったことに目が向いて、できたことが見えなくなる。そのサイクルが、じわじわと心を消耗させる。テキトー紳士の「60点でいい」という発想、これは手を抜けということじゃなくて「できた自分を認めてあげる基準を変えよう」ということ。
最初から60点を目指せば、60点取れたときに「よし!」ってなれる。80点取れたら「やるじゃん」ってなれる。100点を目指して70点だったとき「全然ダメだった」って思うより、ずっとメンタルに優しい。仕事でも家事でも自己研鑽でも、「60点の日があっていい」と決めてしまう。月曜日にすごく頑張れたなら、火曜日は少しゆるめていい。完璧な日を毎日続けようとするから、心が疲れる。「今日は60点でいい日」と決めた日は、60点で終わっていい。それが翌日の余力になる。
自分に「よくやった」と言える基準を下げることは、決して弱さじゃない。自分を大切にすることが、長く動き続けるためには必要なことだと、わたしはテキトー紳士に教えてもらった。「まあ今日もなんとかやったな」の積み重ねが、人生になっていく。心が疲れている日は、特に「60点でいい」を思い出してほしい。
「したいこと」を小さくていいから毎日ひとつ作ってみよう
「ねばならない」だけで動いていると、心が疲れやすくなる。「したい」というエネルギーがなくなると、義務感だけで動く状態になって、ガス欠状態になっていく。だから、小さくていいから「したいこと」を毎日ひとつ意識的に作ってみよう。「したいこと」はすごく小さくていい。「コーヒーをゆっくり飲みたい」「好きな音楽を聴きたい」「今日は早めに寝たい」「本屋さんをぶらぶらしたい」……そのくらいの小ささで十分。
テキトー紳士が「今日はゆっくりコーヒーを飲みなよ、それだけでいい」と言ってたように、「小さい好き」を積み重ねることが、心の回復につながる。心が疲れているときは、大きな「やりたいこと」を見つけようとしなくていい。「これがやりたい!」「この夢を叶えたい!」みたいな壮大なモチベーションは、心が元気なときに考えればいい。疲れているときは、「今日のコーヒーが美味しかった」「お風呂がゆっくりできた」くらいの小さい満足を大事にすること。
その積み重ねが、いつの間にか心のエネルギーを回復させてくれる。心が疲れたと感じているなら、まず「今日の小さいしたいこと」を一つだけ探してみよう。大きなことじゃなくていい。好きなものを食べる、好きな曲を聴く、それだけでいい。そういう小さい「自分へのご褒美」が、疲れた心を少しずつ回復させてくれるから。
モヤ子の気づき(番外編)
テキトー紳士と話した帰り道、なんか肩が軽くなった気がした。
ずっとわたしは「頑張らなきゃ」「もっとやらなきゃ」って思い続けてきたけど、それがそのまま「心が疲れた」の原因だったんだな、って。頑張ることが悪いんじゃなくて、休まずに頑張り続けたことが問題だったんだ、って。「もう無理」って感じてたのは、弱さじゃなくて、サインだったんだ、って。
「60点でいい」って言葉が、特に刺さった。わたし、ずっと100点を目指してたから。100点じゃないと「できなかった」ってなってた。でも60点でいいなら、60点取れた自分を認めてあげられる。そんな単純なことで、こんなに楽になれるんだ、って驚いた。
「何もしない時間」を罪悪感なく過ごすことも、まだ難しいけど、練習してみようと思った。ただコーヒーを飲むことも、ぼーっと空を見ることも、「無駄な時間」じゃなくて「心のガソリン補充」なんだ、って思えたら、少し気が楽になった。心が疲れたって気づいたことが、はじめの一歩なんだと思う。そこから少しずつ変えていければいい。
他にも仕事・お金・人間関係など、いろんな「モヤモヤ」について書いた記事がたくさんあります。よかったら他の記事もみてくださいね。
まとめ:心が疲れたと感じたら、まず立ち止まっていい
「もう無理」って感じるのは、弱さじゃない。頑張り続けてきた証で、心が「ちゃんと休ませて」と言っているサインだ。
今日の話でいちばん大事なのは「心が疲れたサインを受け取ること」。「疲れた」を打ち消して頑張り続けるんじゃなくて、「今の自分、しんどいんだな」と認めることが回復の第一歩。そのうえで、頑張らない日を作ること、60点でいいと決めること、小さい「したいこと」を積み重ねること。それを続けることで、心の疲れは少しずつ回復していく。
完璧にやろうとしなくていい。「まあ今日もなんとかやったな」くらいでいい。心が疲れた日は休んでいい。それが次の日、次の週、また動き出すためのエネルギーになる。テキトー紳士が言ってたみたいに、「世界は君が思ってるほど急いでいない」から。自分のペースで、ゆっくりやっていこう。
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