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体重計に乗るのが怖い。そんな相談を読者さんからもらいました。
数字を見るのがつらい人に向けて書きます。痩せ方の話ではありません。測ること自体をやめずにすむ、測り方の組み立てが今日のテーマです。
相談をくれたのは、去年から自分なりにダイエットを続けてきた方でした。三週間ほど前から、洗面所の体重計をまたいで通っているといいます。乗ろうとして足を上げる。そこで止まる。そのまま歯を磨いて出てくる。この繰り返しだそうです。
本人もわかっています。測らなければ、増えたのか減ったのかは判断できません。それでも乗れないのは、意志が弱いからではありません。体重計が出すのは、体の状態を表す数字です。ところが受け取る側には、努力の採点結果として届きます。だから怖い。
測るのをやめた期間が長くなるほど、次に乗るときの怖さは増えていきます。知らないまま過ごした日数が、そのまま重さに見えてくるからです。つまり、逃げているあいだも数字は頭のなかで働き続けます。相談の方も、それがわかっているから余計に足が止まっていました。
ひとつ足しておきたいことがあります。測定と減量は、別の作業です。減量の方法をどれだけ集めても、測定が止まっていれば効いたかどうかを判定できません。逆に、測定さえ続いていれば、方法は途中で何度でも変えられます。今日の主題は後者のほうです。
今日決めたいのは、乗るか乗らないかではありません。どう測れば数字に振り回されずにすむか、です。測る条件と間隔、それから体重計以外に残す記録。この三つを扱います。
相談タイム
モヤ子「三週間、体重計に乗ってないんです」
熱血トレーナー「いいですね!まずそこを言えたのが大きいです!」
モヤ子「え、いいことなんですか」
熱血トレーナー「乗ってないと自覚できてるってことですから。気づいてない人は、そもそも話題にも出しませんよ」
モヤ子「でも、このままだとまずいのはわかってて……」
熱血トレーナー「わかります!じゃあ質問です。怖いのは数字ですか、それとも数字を見たあとの自分ですか」
モヤ子「……あとの自分、かもしれないです」
ここは切り分けておきたいところです。数字そのものが怖い人は、実のところそう多くありません。怖いのは、数字を見た自分がそのあと何を言い出すか、のほうです。つまり体重計は、引き金を引いているだけです。
熱血トレーナー「増えてたら、自分になんて言いますか」
モヤ子「やっぱりダメだったな、って」
熱血トレーナー「それです!体重計はダメかどうかを判定してません。ただ重さを出してるだけです」
モヤ子「頭ではわかるんですけど」
熱血トレーナー「頭でわかってるなら十分です!ジムでも同じことが起きますよ。測定日に来なくなる人、毎月いますから」
モヤ子「そうなんですか」
熱血トレーナー「測定は成績発表じゃありません!明日のメニューを決めるための材料です」
モヤ子「材料……」
熱血トレーナー「そう!材料が足りないと、こっちは何も組めないんです。だから測ってほしいんですよ」
この言い方には、指導する側の事情がにじんでいます。トレーナーにとって体重は判定材料ではなく設計材料です。増えていれば水分か食事量を疑い、減りすぎていれば運動量を落とす。そのどちらの判断も、数字がないと下せません。だから測定が止まると、指導そのものが止まります。
モヤ子「じゃあ、増えてても怒られないんですか」
熱血トレーナー「怒りませんよ!むしろ増えた週のほうが情報量は多いです」
モヤ子「情報量」
熱血トレーナー「何をしたら増えるかがわかるってことです。それ、減らすときに全部使えますから」
ジムの現場では、測定日を別の呼び方にしているところもあるそうです。チェックではなく更新。呼び名ひとつで来る人が増えるなら、言葉も道具のうちです。また、家で測る人にも同じ手は使えます。
ここまででモヤ子の前提がひとつ揺れました。体重計に乗るのが怖い感覚は、数字と自己評価がくっついたところから来ています。まだ外れていないだけです。くっつきをほどけば、乗ること自体の負担は軽くなります。とはいえ、ほどく作業は考え方を入れ替えるだけでは終わりません。
モヤ子「それでも、いざ乗ろうとすると足が止まるんですよね」
熱血トレーナー「そこは気持ちの問題にしないほうがいいです!乗り方のほうを変えましょう」
モヤ子「乗り方、ですか」
熱血トレーナー「いつ乗るか、何を着て乗るか、どこに書くか。全部決めておくんです。決めてないから毎回考えることになって、考えるたびに怖くなる」
ここから先は、その決め方を具体的にしていきます。
解決策
体重計に乗るのが怖い日に、頭の中で起きていること
乗れない日の頭のなかは、意外と忙しく動いています。数字を思い浮かべ、その数字を見たあとの自分まで一瞬で想像してしまう。想像のなかの自分は落ち込んでいます。しかも、その予行演習には一秒もかかりません。足が止まるのは、演習が終わったあとです。
つまり避けているのは数字ではありません。数字が引き金になって始まる自己評価のほうです。ここを取り違えると、対策の向きがずれます。実際、体重計を隠しても、隠したこと自体が気になって同じところへ戻ってきます。
評価と数字を切り離す作業は、頭のなかだけでは進みません。そこで、言い方を先に用意しておきます。増えていたときに何と言うかを、乗る前に決めておく。「水分が残っているかもしれない」でも「先週は外食が二回あった」でも構いません。事実の候補を並べておくと、反射的な自己否定が入る隙間が狭くなります。
この切り替えが苦手な人ほど、体重計に乗るのが怖い状態は長引きます。何かあるたびに自分を責める癖のほうは、何かあるとすぐ自分を責めてしまう…自己責任グセを手放す方法で扱っています。数字に限らず同じ構造が働いているなら、あわせて読んでみてください。
熱血トレーナー「言い方を決めておくの、ほんとに効きますよ!」
モヤ子「そんな単純なことでいいんですか」
熱血トレーナー「単純だから効くんです。怖いときに複雑なことはできません!」
もうひとつ、怖さを大きくしているものがあります。前回の記憶です。最後に乗った日の数字だけが頭に残っています。経過日数が長いほど、そこからの想定は悪いほうへ伸びます。ところが実際の体は、想定ほど極端には動いていません。
この差を確かめる方法は、乗ってみる以外にありません。ただ、いきなり結果を受け止めにいく必要もないです。数字を見ずに乗るところから始めても構いません。表示を見ないで降りて、その日は終わり。翌日は表示を一秒だけ見る。体を慣らす順番と同じで、目のほうも慣らせます。
段取りを分けておくと、負担はもっと小さくなります。乗る、見る、記録する。これを同じ日にそろえる必要はありません。まずは乗るだけの日を何日か作って、慣れてきたら見る日を足す。そうすると、途中でやめても失うものがなくなります。
ひとつだけ、線を引いておきたいことがあります。体重や食べたものが頭から離れない、数字が減らないと食事をとれない、食べたあとに吐いてしまう。こうした状態が続いているなら、測り方の工夫でどうにかする話ではありません。摂食障害全国支援センターが運営する摂食障害情報ポータルサイトに、相談窓口と受診できる医療機関の探し方がまとまっています。ためらわずに、早めに専門の窓口へつないでください。
そこまでではない、という人のほうが多いはずです。その場合は、乗り方の設計でだいぶ変わります。
朝と夜で違う数字を出す体重計
体重は一日のなかで動きます。食事の内容、飲んだ水の量、便通、汗のかき方。どれもそのまま重さに乗ります。そのため、朝と夜で一キロ以上ちがうことも珍しくありません。
健診機関のこころとからだの元氣プラザも、体重測定を習慣化しましょう!という記事で「体重は1日の中で変動します」と書いています。そのうえで、食事前や運動前など同じ条件で測ることをすすめています。条件をそろえない測定は、比べられない数字を集めているだけになりがちです。
塩分の多いものを食べた翌日に増えるのは、その多くが水分です。むくみとして出てくることもあります。脚のむくみが気になるならむくみで脚がパンパン…夕方になると太く見える悩みの解消法もどうぞ。ただし、数日で戻る変化を脂肪の増加と読むと、そのあとの判断がひとつずつずれていきます。
生理周期でも重さは動きます。詳しくは生理周期で体重が増減する…波に合わせた痩せ方にまとめてあります。ここで押さえたいのは、日々の上下には理由があるという一点だけです。
熱血トレーナー「一日の数字で一喜一憂するの、いちばんもったいないです!」
モヤ子「じゃあ何を見ればいいんですか」
熱血トレーナー「幅です!先週は五十二から五十三のあいだ、今週は五十一台が多い。そういう見方に切り替えましょう」
点で見ると、上下するたびに気持ちが動きます。一方、幅で見れば動いていないことがわかります。二週間ぶんの数字を並べて、いちばん軽い日といちばん重い日を確かめてみてください。その差が自分の変動幅です。幅を知っている人は、幅のなかの数字に驚きません。
体重計に乗るのが怖い理由の一部は、この変動幅を知らないことから来ています。知らないままだと、増えた一日が異常事態に見えます。逆に、知っていれば、いつもの範囲だと処理できます。
もっとも、幅を知るには何日か測る必要があります。最初の数日は情報を集める期間だと考えてください。その期間の数字で落ち込むのは、材料を集めながら採点しているようなものです。
幅は、季節や生活の変化でも動きます。夏に汗をかいた日と、冬に鍋を食べた翌日では、出てくる数字の性格が違います。さらに、旅行や出張が入った週は、いつもの幅から外れて当然です。そこを異常だと受け取らないために、幅は一度測って終わりにしないでください。
体重計そのものの精度も、少しだけ知っておくと気が楽になります。家庭用の機種は、百グラム単位で表示されても、その桁までが正確とはかぎりません。しかし、同じ機種で同じ条件なら、差の出方はそろいます。だからこそ、機種を買い替えたときは前の数字と直接つなげないでください。
測る時間も服装もばらばらだった
相談の方に、以前どう測っていたかを聞きました。お風呂から上がった夜に乗る日もあれば、朝に着替えてから乗る日もある。夕食のあとに乗っていた日まであったそうです。つまり、比べる相手が毎回違っていたわけです。
条件は、そろえるほど読みやすくなります。起きてトイレに行ったあと、着ているものを毎回同じにして、同じ体重計に乗る。また、置き場所も動かさないほうがいいです。カーペットの上とフローリングの上では、表示が変わる機種があります。
頻度のほうは、正解がひとつではありません。毎日測る人もいれば、週に一度でうまくいく人もいます。判断の材料になるのは、どちらが自分を追い込まないかです。たしかに毎日のほうが情報は増えます。ただ、上下に反応してしまう人には、週に一度が向いています。
間隔があくほど怖くなる人は、毎日のほうが楽です。そのとき大事なのは、毎日測ることを目標にしないことです。測れなかった日を数えはじめると、そこからまた足が止まります。
熱血トレーナー「週一でいくなら、曜日も固定してくださいね!」
モヤ子「曜日まで」
熱血トレーナー「金曜と月曜じゃ、外食の入り方がぜんぜん違いますから」
記録の置き場所も先に決めます。アプリでも紙の手帳でも構いません。ひとつ守りたいのは、数字の横に感想を書かないことです。「食べすぎた」「最悪」といった言葉を残すと、次に開いたときにその言葉から読むことになります。記録は数字と日付だけで足ります。さらに、見返す日も決めておくと安全です。毎日見返すと、また一日単位の判断に戻ってしまいます。
数字が動かない時期は、いずれ必ず来ます。そこで測るのをやめてしまう人が多いので、先に知っておいてください。停滞したときの考え方はダイエット停滞期の乗り越え方!体重が減らない原因と突破の方法で詳しく扱っています。
測る場所の話もしておきます。実家や旅行先の体重計は、家のものと同じ数字を出しません。そもそも機種が違えば、基準の取り方も違います。帰ってから家の体重計で測り直す。そのほうが、記録の列は途切れません。
条件と頻度と記録先。ここまでを決めておくと、乗るたびに考えることが減ります。考える回数が減れば、迷う回数も減ります。体重計に乗るのが怖い人にとって、迷っている時間はいちばん削りたいところです。
体重計に乗れない日でも記録は残せる
どうしても乗れない日はあります。前の日に食べすぎた自覚があるとき、生理前でむくんでいるとき、単に気分が落ちているとき。そういう日に無理して乗って落ち込むより、別のものを記録するほうが続きます。
ウエストは、体重より遅れて動きます。同じ位置で測るために、へその高さにそろえてください。週に一度で十分です。実際、数字が減っていないのにウエストは変わっていた。そういう経験をすると、体重計への依存は薄まります。
写真も残しておくと役に立ちます。同じ場所、同じ明るさ、同じ服装で、正面と横から。毎日は要りません。とはいえ、間隔があきすぎると比べにくくなります。二週間おきに撮ったものを並べると、鏡では気づけない変化が出てきます。
服の余裕も指標になります。特定の一本を決めておくのが早いです。あるいは、いちばんきついボトムスでも構いません。ウエストのボタンを留めたときの感じは、数字より正直なことがあります。
体調のほうも記録に入れてください。よく眠れたか、朝に体が重くないか、階段で息が上がるか。体重が変わらない時期でも、この三つは先に動くことがあります。加えて、どれも道具なしで取れます。
熱血トレーナー「体が軽い日って、自分でわかりますよね」
モヤ子「あ、わかります」
熱血トレーナー「それ、立派なデータです!測定器がなくても取れるやつですよ」
思いきって、体重計を二週間だけしまうのも手です。そのかわり、ウエストと写真は必ず残してください。そうすると、数字から離れても記録は続くとわかります。戻すときは、しまう前に決めた日に戻してください。
指標を増やしすぎるのも、それはそれで続きません。ウエスト、写真、服、体調。全部を毎週そろえようとすると、記録のほうが仕事になります。まずは本命をひとつだけ決めてください。残りは思い出したときで足ります。
続かないことに慣れてしまった人には、何をやっても続かない3日坊主を卒業!意志に頼らない習慣の作り方のほうも役に立ちます。測定も習慣なので、仕組みの作り方は共通です。
記録の見方をひとつ変えると、さらに楽になります。減った日を数えるのではなく、測れた日を数える。体重計に乗るのが怖い時期に守りたいのは、数字ではなく測定の回数です。回数さえ残っていれば、判断の材料はいつでも作り直せます。
まとめ
体重計に乗るのが怖い気持ちは、無理に消さなくていいものです。むしろ、消そうとするより乗る条件を先に決めるほうが早く動けます。時間と服装をそろえ、頻度を自分に合わせ、数字の横に感想を書かない。それだけで乗るまでの負担はかなり軽くなります。
一日の上下には理由があります。だから、増えた日も範囲のなかの出来事として処理できます。どうしても乗れない日は、ウエストや写真や体調のほうを残しておく。測定を切らさないことが、いちばんの目的です。
とはいえ、最初から全部そろえる必要はありません。明日の朝、乗る時間だけ決めておく。そこから先は、続いた分だけ足していけます。
モヤ子「明日の朝、着替える前に乗ってみます」
熱血トレーナー「いいですね!数字は見なくてもいいですよ。まず乗るところまでです!」
モヤ子「見なくていいんですか」
熱血トレーナー「乗れた日が一日増えます。そこからでいきましょう!」
よくある質問FAQ
毎日測るのと週に一度、体重計との付き合い方として続くのはどちらですか
どちらでも続きます。決め手になるのは、上下する数字にどれくらい反応してしまうかです。一日で二百グラム増えただけで気持ちが沈むタイプなら、週に一度が向いています。反対に、間隔があくほど想像がふくらむ人もいます。そういうタイプなら、毎日のほうが負担は小さいです。
迷ったら、二週間ずつ試してみてください。毎日で二週間、そのあと週一で二週間。終わったときに、どちらの期間が気楽だったかを思い出せば十分です。そのうえで、合わなかったほうは無理に続けなくて構いません。ちなみに毎日測る場合も、見るのは一日ごとの増減ではなく数日の幅です。そこだけは変えないでください。
数字が増えていた日に、一日中引きずってしまいます
乗る前に言葉を用意しておくと、引きずる時間が短くなります。「塩分の多い日が続いた」「まだ体に水分が残っている」といった事実の候補を、二つか三つ持っておく。そうすれば、自己否定が始まる前にそちらへ手が伸びます。
用意しても沈む日は来ます。そのときは、その日のうちに判断しないと決めておいてください。数字の意味は、一週間ぶんが並んでから読むものです。単独の一日を読もうとするから、読み間違えます。むしろ増えた日は、何をした週なのかを書き足しておくほうがあとで役に立ちます。
体重計が家にあること自体がつらいので、処分してもいいですか
処分する前に、置き場所を変えるほうを試してみてください。洗面所のように毎日視界に入る場所だと、乗らない日も存在を意識させられます。押し入れや棚の中にしまって、測る日だけ出す。それだけでも、目に入るたびに責められる感じは減ります。
手放したい気持ち自体は、無視しなくていいものです。ただ、手放したあとに測りたくなったとき、買い直す手間が新しい言い訳になることもあります。二週間しまってみて、それでも要らないと思えたら手放す。この順番にしておくと、あとで困りません。
体重や食事のことが頭から離れず、生活のほうが回らなくなっている。そういう状態なら、体重計をどうするかという話ではありません。そのときは、さきほどの相談窓口を頼ってください。