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最近、読者さんからこんな相談をもらって…
美容院で希望を言えない、という悩みです。予約を入れた日から、少し気が重くなるそうです。
話を聞くと、毎回ほぼ同じ流れだといいます。「今日はどうしますか」と聞かれたら、「肩くらいで、あとはお任せで」と答えます。仕上げに後ろを鏡で見せてもらっても、出てくるのは「大丈夫です」のひとことだけ。ところが今回は、家で結ぼうとしたら長さが足りませんでした。結べる長さを残してほしいとは、一度も口にしていなかったそうです。
美容師さんの腕に不満はなく、頼んだとおりには切ってもらえているそうです。つまり、止まっているのは頼み方のほうでした。毎回「肩くらい」と「お任せ」から先に進まないことは、本人もわかっています。それでも席に座ると、口から出るのはいつもの二つの言葉です。
そこで今回は、ロジカル先輩と一緒にこの相談に答えていきます。次の予約までに書くメモと、席で口にするひとことを決めるところまでが目標です。
性格の話は遠慮しすぎて本当に食べたいものを言えない…気をつかいすぎる自分の変え方に書きました。ここでは、予約から仕上げの鏡までの段取りに絞ります。
相談タイム|「お任せで」で終わる美容院の会話をふり返る
モヤ子「来週、美容院なんですよ」
ロジカル先輩「うん。で、その顔は何」
モヤ子「顔に出てました?予約した日から、ちょっと憂うつで」
ロジカル先輩「髪を切るのが嫌なの?」
モヤ子「切るのは好きです。注文するのが苦手なんです」
ロジカル先輩「前回は何て頼んだ」
モヤ子「肩くらいで、あとはお任せで、って」
ロジカル先輩「仕上がりは?」
モヤ子「悪くはなかったです。でも、なんか違う」
ロジカル先輩「どこが違った」
モヤ子「えっと……全体的に?」
ロジカル先輩「そこだね」
先輩が拾ったのは「全体的に」のひとことでした。どこが違ったのかを言えないうちは、次の予約でも頼み方を変えようがありません。だから前回と同じ「肩くらい」が、また口から出ます。言う中身が決まっていなければ、美容院で希望を言えないのも無理はありません。
ロジカル先輩「仕事でいちばん揉める頼まれ方、知ってる?」
モヤ子「なんだろう。急ぎで、とかですか」
ロジカル先輩「『いい感じにしといて』」
モヤ子「あー……言われたこと、あります」
ロジカル先輩「頼まれた側は、相手の『いい感じ』を想像で作るしかない。外れたら作り直し。しかも、どこが外れたのかは頼んだ本人もうまく説明できない」
モヤ子「お任せで、と同じだ」
ロジカル先輩「同じ形だよ。美容師さんは君の『いい感じ』を、肩くらいっていう情報だけで当てにいってる」
モヤ子「そう聞くと、ちょっと申し訳ないかも」
ロジカル先輩「謝る話じゃないよ。材料を渡せばいいだけだから」
モヤ子「材料って、たとえば?」
ロジカル先輩「前回の『なんか違う』を、場所で言えるようにすること。前髪なのか、後ろなのか、量なのか」
モヤ子「後ろ……かな。結べなかったので」
ロジカル先輩「ほら、もう一個出た」
美容師さんが困るのは、長さの目安ひとつで残りを全部任されたときです。逆に、手がかりがいくつかあれば、そこから提案を組み立てられます。「結べなかった」も、その手がかりの一つです。
モヤ子「でも材料って言われても。鏡の前に座ると、頭が真っ白になるんです」
ロジカル先輩「だったら、席では考えないことにしよう」
モヤ子「え?」
ロジカル先輩「言うことは家で決めておく。席ではそれを読むだけ。スマホのメモでいいよ」
モヤ子「カンペですか」
ロジカル先輩「そう、カンペ。会議の前に要点を書いておくのと変わらない」
モヤ子「スマホを見ながら話すの、感じ悪くないですか」
ロジカル先輩「画面ごと見せればいいよ。向こうも自分の目で読めるから、聞き違えがない」
モヤ子「あ、見せちゃえばいいのか」
鏡越しの会話は、相手の顔を直接見ないまま進みます。しかも、こちらはケープを着けて座っているだけで、手元に何もありません。その状態で好みを一から言葉にするのは、慣れていないと難しいものです。だからこそ、先輩はカンペを勧めました。言葉を探す作業を、席から家に移すためです。
モヤ子「何を書けばいいんですか。なりたい髪型?」
ロジカル先輩「それは写真に任せよう。メモには、写真に写らないことを書く」
モヤ子「写らないこと……」
ロジカル先輩「今の髪で困ってること。変えたくないところ。それから、朝に髪にかけられる時間」
モヤ子「時間まで?」
ロジカル先輩「毎朝アイロンを使う人と、乾かして終わりの人。同じ写真を見せても、向いてる形は違うと思うよ」
モヤ子「私、乾かして終わりです……」
ロジカル先輩「じゃあ、それを書けばいい。立派な条件だから」
モヤ子「条件って言われると、急に仕事っぽい」
ロジカル先輩「仕事と同じだよ。条件が先で、デザインはそのあと」
手入れの時間は、本人が言わない限り美容師さんにはわかりません。しかも、切ってもらった日は美容師さんがブローまでしてくれます。つまり、同じ形を家で再現できるかが見えるのは、翌朝になってからです。
モヤ子「あと、私よく『軽めで』って言うんですけど」
ロジカル先輩「軽めって、量を減らすこと?長さを短くすること?」
モヤ子「……どっちだろう」
ロジカル先輩「言った本人がわからない言葉は、聞いた側にはもっとわからない」
モヤ子「うっ」
美容院でよく出てくる言葉に「軽め」があります。毛量をすくのか、段を入れて動きを出すのか、単純に短くするのか。どの意味でも通じてしまうぶん、受け取る側の解釈に任されます。そのため、同じ「軽め」でも、担当する人によって仕上がりが変わります。「すっきり」や「ふんわり」も事情は似ています。
モヤ子「もうひとつあって。切ってる途中で『あれ?』って思っても、言えないんですよ」
ロジカル先輩「途中は言いにくいよね。はさみが動いてるし」
モヤ子「そうなんです。切ったら戻らないし、今さら言っても遅いかなって」
ロジカル先輩「なら、言う場面を最初から決めておけばいい」
モヤ子「場面?」
ロジカル先輩「切り始める前に一回。仕上げで後ろを見せてもらうときに一回。この二回だけ」
モヤ子「二回なら……言えるかも」
途中で黙ってしまうのは、言い出すタイミングを自分で探すしかないからでもあります。言う場面が二つに決まっていれば、それ以外の時間は安心して座っていられます。
ロジカル先輩「言う文も決めておこう。『この長さで合ってますか』。質問の形にしておけば、文句には聞こえない」
モヤ子「確認なら、できそうです。でも、そこで『短いほうが似合いますよ』って言われたら、たぶん流されます」
ロジカル先輩「流されていいかどうかは、メモの二行目で決まる」
モヤ子「変えたくないところ?」
ロジカル先輩「そう。結べる長さは残すって書いてあれば、提案を聞いたうえで選べる。書いてなければ、その場の空気で決まる」
とはいえ、提案を聞いて、結べない長さも試してみたくなることはあります。そのときは、メモの二行目を書き換えればいいのです。書いてあった条件を自分で変えたのなら、流されたのとは違います。
ここからは、メモ、写真、言葉の置きかえ、確認の場面の順に見ていきましょう。
解決策|美容院で希望を言えない人が、予約の前に決めておくこと
美容院で希望を伝えるメモは、困りごとから書く
メモに書くのは三行だけです。一行目は今の髪の困りごと、二行目は変えたくないところ、三行目は朝の時間です。
まず一行目の困りごとは、起きる場面まで書くのがコツです。「広がる」より「雨の日に横へ広がる」。「重い」より「結ぶと後ろがもたつく」。美容師さんは、毎朝の髪の様子を見ていません。だから、右だけはねる、分け目が割れるといった小さな不満も使える情報になります。思いつかない日は、朝の支度で手が止まる瞬間を思い出してみてください。
二行目の変えたくないところは、意外と書き忘れます。結べる長さは残したい、前髪は眉にかかる程度でいい、といった一行です。現役美容師の西岡卓志さんが、All Aboutの美容院での頼み方!失敗しない髪型の頼み方とはでお任せについて答えています。要点は「最低限変えたくないところだけ、事前に伝えておくとよいと思います」でした。だから、お任せにする日でも、この一行だけは渡しておきましょう。
三行目の時間は、分で書きます。たとえば「乾かすだけで五分」「アイロンは休みの日だけ」。これがあれば、毎朝の手間がかからない形を美容師さんと相談できます。ちなみに、髪以外の手入れを時短する方法は美容にお金も時間もかけられない…ズボラでも垢抜ける方法に書きました。
書くのは、予約を入れたその日がちょうどいい。髪の不満は、美容院に行こうと決めた日がいちばん鮮明です。
美容師さんに見せる写真は、三枚と「ここが好き」
写真は一枚より、似た雰囲気のものを三枚ほど用意します。ヘアライターの佐藤友美さんの話が、美容室で「失敗しないオーダー」、教えますに載っています。そこには「1枚だけだと、その髪型のどこが好きなのか伝わりにくい」とありました。三枚並べれば、どの写真にも共通している部分が、好きなところとして浮かんできます。
選んだ写真には、好きな場所を指で差してひとこと添えます。「この前髪の幅」「毛先が内に入っているところ」。それだけで、美容師さんは写真のどこを手本にすればいいのかがはっきりします。
モヤ子「芸能人の写真を見せるの、ちょっと恥ずかしくないですか」
ロジカル先輩「美容師さんが見てるのは顔じゃなくて、髪の形だよ。資料だと思えばいい」
できれば、横や後ろから写った写真も一枚入れます。正面だけでは、後ろの長さや段の入り方までは見えないからです。また、なりたくない写真を混ぜるのも手です。前に切って後悔した髪型の写真は、言葉で説明するより確かな手がかりになります。
眉や服まで変えたいなら垢抜けたいのにやり方がわからない…地味な自分を変えるメイクと垢抜けの始め方もどうぞ。
「軽めで」を、美容院で通じる言葉に置きかえる
「軽め」のような幅のある言葉は、量の話なのか長さの話なのかに分けて言い直します。量を減らしたいだけなら「量を減らしたい、長さはこのまま」と最初に言っておきます。
一方、長さを変えたいときは、センチより体の位置で言います。鎖骨にかかるくらい、あごの下、結んだときに毛先が出るくらい。前髪なら、眉の上、眉にかかる、目にかかるの三つです。「肩につくかつかないか」のように、境目で言うのも伝わりやすい言い方です。鏡の前で自分の指を当てながら言えば、もっと確かです。
センチを避けるのは、濡れた髪と乾いた髪で長さの見え方が変わるからです。さらに、くせのある髪は乾くと縮んで、思ったより短く見えることがあります。「三センチ」をどこから測るのかも、人によってずれます。
「すいてください」は、すく量しだいで仕上がりが大きく変わります。広がりを抑えたいのか、まとまりは残したいのか。目的のほうを言えば、すく量は美容師さんが決めてくれます。
カラーの「明るめ」も、指す色の幅がかなり広い言葉です。色は写真で見せたほうが迷いません。ただ、白髪が気になるなら、話の出発点は色より「隠すか、なじませるか」です。染め方の違いは白髪が増えてきてショック…若く見せる対策とケアの始め方が詳しいです。
美容院で希望を言えないなら、確認は二回に絞る
確認する場面は、切り始める前と仕上げの鏡の二回です。
一回目は、カウンセリングが終わって、はさみが入る前です。「この長さで合ってますか」と聞いて、切る位置を指で示してもらいます。示された位置が思っていたより上なら、「もう少し下で」と言うのはこのときです。迷ったときは、長めに残してもらうほうに寄せましょう。切った髪は戻りませんが、あとから切り足すことはできます。ここで位置が合っていれば、途中で不安になっても任せておけます。
二回目は、仕上げで後ろを見せてもらうときです。ここでは「大丈夫です」の代わりに、気になる場所を一つだけ口にします。そうすれば、直せるかどうかを美容師さんと一緒に確かめられます。言い方は「右の毛先が少しはねて見えます」くらいで十分です。
モヤ子「仕上げで言うの、やっぱり勇気いりますね」
ロジカル先輩「不具合の報告と同じだよ。どこが、どう見えるかだけ伝えて、直し方は相手に任せる」
モヤ子「直し方まで考えなくていいんだ。それなら言えそう」
確認の文は、メモのいちばん下に書いておくと、席でそのまま読めます。
鏡の前では気づかず、家に帰ってから気になることもあります。その場合は、なるべく早めに店へ連絡しましょう。お直しを受けてくれる期間や扱いは、店ごとに違います。なので、予約のときに店のページで一度見ておくと安心です。
まとめ|次の美容院で、最初に見せるもの
美容院で希望を言えないときに要るのは、話し方の練習より、家で書く三行のメモです。困っていること、変えたくないところ、朝の時間を、この順に書きます。そこに写真を三枚つけて、確認は切る前と仕上げの鏡の二回にします。
全部は大変なら、二行目の「変えたくないところ」だけでも書いていってください。お任せにした日でも、結べる長さのような譲れない部分は守ってもらいやすくなります。
髪型そのものは、最後は美容師さんとの相談で決まります。こちらが用意するのは、その相談に使う材料です。メモと写真がそろっていれば、提案に気持ちが動いても、何を残すかは自分で選べます。
席に着いて「今日はどうしますか」と聞かれたら、メモの画面を見せてください。それが最初のひとことの代わりになります。しかも、美容師さんから見ても、聞き出す手間が一つ減ります。
モヤ子「帰りの電車でメモ書きます。一行目は、朝、右だけはねる」
ロジカル先輩「いいね。二行目は?」
モヤ子「結べる長さは残す。三行目が、乾かすだけで五分」
ロジカル先輩「立派な仕様書だ」
モヤ子「髪の仕様書……ちょっと楽しくなってきました」
よくある質問FAQ
担当の美容師さんが毎回変わるときも、同じ伝え方でいいですか
同じメモで通じます。担当が変わる店こそ、メモの出番です。毎回、初対面の人に一から説明することになるからです。メモと写真があれば、その説明は画面を見せるところから始められます。
予約サイトに要望を書く欄があれば、メモの三行を貼っておくのも手です。前もって読んでもらえれば、カウンセリングを長さの確認から始められます。また、前回の仕上がりを撮った写真があれば、それも一緒に見せましょう。前回どこで切ったのかは、写真のほうが正確です。
加えて、前回気に入ったところと気になったところも、一行ずつ足しておきます。たとえば「前髪の幅はよかった」「後ろが思ったより短かった」。店によっては、前回の施術内容が記録に残っています。それでも、どこが気に入ったのかは、こちらが言わない限り伝わりません。この一行があれば、担当が替わっても前回の続きから話せます。
逆に、担当が毎回同じ人でもメモは役に立ちます。慣れた相手ほど「いつもの感じで」と頼んでしまい、少しずつずれていくからです。そういうときは「今回は前髪を少し長めに」と、前回からの変化を一つだけ伝えます。
メモは、美容院に行くたびに上書きしていきます。そうすると、三回目あたりで、自分の髪で毎回ずれやすい場所が見えてくるはずです。
写真のモデルと髪質が違っても、美容院で見せていいですか
見せてかまいません。むしろ髪質が違うときほど、写真を見ながらのほうが相談しやすくなります。
そのうえで「私の髪だと、どこまで近づけますか」と聞いてみてください。くせや毛量によって、写真どおりにならない部分は出てきます。どこまで再現できて、どこからが難しいのか。それを切る前に聞いておけば、仕上がりを見て驚くことが減ります。質問の前に自分の髪のくせを伝えておくと、答えも具体的になります。くせは、メモの一行目の「右側だけうねる」「湿気で広がる」を読み上げるだけです。
答えが思っていたのと違ったら、近づけるために何を変えるのかを聞きましょう。長さを少し残すのか、パーマをかけるのか。選択肢を聞いてから、その日の内容を決めます。自分の髪に合わせて写真から少し変えた形のほうが、家では扱いやすいこともあります。
今の髪より長い写真は、その日のうちには再現できません。伸ばしている途中なら、写真は「最終的にこの長さ」という目標として見せます。今日どこを整えるかは、そのあとの相談です。
ちなみに、前髪だけ、毛先だけといった部分を真似したい写真も役に立ちます。美容師さんが写真の髪型を言葉にしてくれたら、それもメモに足しておきましょう。
仕上がりが気になっても、その場で言うと気まずくなりませんか
仕上げで後ろの鏡を見せてくれるのは、仕上がりを確認してもらうためです。なので、気になるところを伝えるのは、その時間の本来の使い方です。
「なんか違う」と言われると、美容師さんもどこを直せばいいのか迷います。一方、「左の前髪が少し長く見えます」なら、美容師さんはその場で整えられます。整えられない場合も、そうなっている理由を説明できます。感想ではなく見たままを伝えるので、文句にも聞こえにくい言い方です。次のお客さんが待っていそうな日でも、一か所だけなら時間はかかりません。直してもらったら、もう一度鏡を見せてもらうところまでが確認です。
美容院で希望を言えない人ほど、鏡を見せられた瞬間に「大丈夫です」と返しがちです。まずは三秒だけ黙って、全体を見てください。気になる場所が一つ見つかったら、そこだけ伝えます。美容師さんのほうから「気になるところはありますか」と聞いてくれる店もあります。そのときに一つ言えるよう、鏡を見る前から心づもりをしておくと楽です。
それでも言えなかった日は、家で髪の写真を撮っておきます。そして次の予約のメモに、「前回、左の前髪が長く感じた」と一行足します。言えなかった分は、そうやって次の回に持ち越せます。