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資格試験の直前に間に合わないと感じている読者さんから、相談をもらいました。本番まで一ヶ月を切っているのに、テキストは半分で止まっているそうです。
同じ状態の人は珍しくないと思います。申し込んだころは、毎日二時間やれば余裕で回る計算でした。ただ実際には残業が続き、休みの日は昼まで寝て終わりました。気づくと机の上には、開いていないページのほうが厚く残っています。しかも、残っている側ほど手強い分野だったりします。
ここで多くの人がやることは決まっています。もう一度スケジュールを引き直すことです。一日五時間、休日は十時間。紙の上ではきれいに収まります。ところが三日ももちません。そこで、また引き直す。この往復に一週間が消えます。
この記事で扱うのは、その引き直しではありません。残り時間で何を捨てるかの決め方と、間に合わないという焦りが膨らんだときの戻し方です。読み終わるころには、明日どこを開くかが一つに決まっているはずです。ちなみに計画の立て方そのものでつまずいている人には、勉強の計画がいつも崩れる…続く計画の立て方のほうが向いています。
先に一つだけ。そもそも間に合わないことと、落ちることは別です。実際、範囲が終わらないまま合格していく人は毎回います。逆に、全部やったのに届かない人もいます。試験が測るのは進捗率ではなく、当日の得点だけですから。
相談タイム|資格試験の直前なのに、テキストが半分で止まっている
今回の相談相手はロジカル先輩です。IT企業で働いていて、感情論より先に条件のほうを確認する人です。
モヤ子「先輩、もうダメかもしれません。資格試験まであと一ヶ月なのに、テキストが半分しか終わってないんです」
ロジカル先輩「半分は終わってるんだ」
モヤ子「終わってる、っていうか…読んだだけです。問題はほとんど解いてません」
ロジカル先輩「わかった。じゃあ聞き方を変えるね。その試験、何点取れば受かるの?」
モヤ子「えっと…六割くらいだったと思います」
ロジカル先輩「思います、なんだ」
モヤ子「……はい。ちゃんと調べてないです」
ロジカル先輩「そこが今いちばん効くところだと思うよ。ゴールの位置を知らないまま走ってるから、どこまで行けば足りるのか一生わからない。それで全部やらなきゃって話になる」
モヤ子「でも、範囲って全部出るじゃないですか」
ロジカル先輩「出るよ。ただし同じ重さでは出ない。配点が厚い分野と、何年かに一度しか顔を出さない分野が、同じ棚に並んでるだけ」
モヤ子「……そこ、考えたことなかったです。全部同じ大きさに見えてました」
ロジカル先輩「テキストって、そう見えるように作ってあるからね。ページ数は分野ごとにそろえてある。でも配点はそろってない」
モヤ子「じゃあ、厚い分野ってどうやってわかるんですか」
ロジカル先輩「過去問。三回分でだいたい見える。モヤ子さん、過去問は買ってある?」
モヤ子「買ってあります。テキストが終わってからやろうと思って、袋のままです」
ロジカル先輩「その順番、直前期だと逆なんだよね。過去問は最後の腕試しじゃなくて、どこを捨てるかを決める地図だから」
モヤ子「地図……。実力がついてから開くものだと思ってました」
ロジカル先輩「時間があるときはそれで合ってる。今回はもう時間のほうが足りないからね。……先にもう一個聞きたいんだけど、今いちばんつらいのは、範囲が残ってること? それとも、残ってるのに手が止まること?」
モヤ子「……止まるほうです。夜、机に座ると、まず全体を眺めちゃうんですよ。それでもう無理だなって思って、スマホ見て終わる」
ロジカル先輩「うん。それ、意志の話じゃないと思う。全体を眺めてるからだよ」
モヤ子「眺めちゃダメなんですか」
ロジカル先輩「この時期はね。全体を見ると、終わってない量が一気に目に入る。人は量そのものより、量が確定してないことに焦るから」
モヤ子「確定してない……?」
ロジカル先輩「あと何時間で終わるか計算できない状態のこと。三十分で片づくとわかってる仕事は、残ってても平気でしょ。終わりが見えない仕事だけ、頭の中で膨らんでいく」
モヤ子「あー……それ、会社でもあります。締め切りより、何が残ってるかわからないほうがしんどいです」
ロジカル先輩「同じ構造だよ。だから資格試験の直前にやることは二つしかない。どこを捨てるか決めることと、捨てた自分を責めないこと」
モヤ子「捨てる、ですか。それ、ちょっと怖いです」
ロジカル先輩「怖いよね。捨てたところが本番で出たらどうしよう、って考えるでしょ」
モヤ子「考えます。めちゃくちゃ考えます。三日前とかに急に不安になって、結局そこを開いちゃうんです」
ロジカル先輩「開いた結果、その日どうなった?」
モヤ子「……一ページも進まないで寝ました」
ロジカル先輩「そうなるんだよ。その心配ね、損得が合ってないんだ。捨てた分野が出る確率より、全部を薄く広げて全部落とす確率のほうが高いから」
モヤ子「……うっ」
ロジカル先輩「あと、捨てるって永久追放じゃないからね。今回の一ヶ月では触らない、ってだけ。来年また受けるなら、そのときやればいい」
モヤ子「あ、そう聞くとちょっと軽くなります」
ロジカル先輩「一ヶ月あれば点は動くよ。動かし方を先に決めるだけ」
この続きが今回の中身です。捨てる基準をどこに置くか。そのうえで、焦りが出たときにどこへ戻るか。順に見ていきます。
解決策|資格試験の直前に間に合わないとき、捨てていいもの
満点を目指す勉強は資格試験の直前に合わない
最初にやることは、勉強ではありません。受ける試験の合格条件を、数字で確認することです。
総得点で何点必要か。科目ごとの最低点があるか。免除や加点の制度があるか。この三つは主催団体が公表しています。たとえば日商簿記なら日本商工会議所の検定サイトに要項が置かれています。とはいえ試験ごとに扱いが違うので、記憶ではなく公式の記載を見てください。
ここを見ないまま走ると、目標が自動的に「全範囲を一周する」に化けます。一周は手段です。しかし手段を目標の位置に置くと、点にならない場所へ時間が流れます。
合格点が六割の試験なら、四割は落としてよいという意味になります。四割です。かなり大きい。つまり、この四割をどこで使うかを決める作業が、直前期の設計にあたります。
ただ、科目ごとの最低点がある試験は扱いが変わります。総得点が足りていても、一科目でも基準を割れば不合格になる形式です。その場合に切ってよいのは、最低点を確保したあとの上積みだけです。
条件を確認したら、次は捨てるものの一覧です。資格試験の直前に手放してよいものは、思っているより多い。
ひとつめは、理解して納得したいという欲。なぜこの規定がこうなっているのかを追いかける時間は、平常期のものです。むしろ残り一ヶ月なら、答えの形を覚えたほうが点になります。
ノートの体裁も要りません。色を分ける作業に手が伸びるのは、勉強した気分がいちばん安く手に入るからです。しかも、やった感じだけはしっかり残ります。
それから、新しい教材。よく言われることですが、理由は単純です。新しい本は最初の三十ページだけ丁寧に読まれて、あとは背表紙になります。手元の本の、間違えたページのほうが情報量は多い。教材が増え続けている自覚がある人は、参考書ばかり増えて勉強が進まない…積読を終わらせる学び方も見てみてください。
最後に、テキストを頭から読む時間。直前期に読むのは、問題を解いて外したところだけで足ります。読む勉強は範囲が広いほど遅くなるので、残り時間が短いときほど相性が悪い。
もし勉強の進み具合を発信しているなら、それも直前期は止めていいものに入ります。報告のために整える時間が、そのまま勉強の時間から引かれるからです。誰にも言わずに一ヶ月やる、で問題ありません。
捨てるかどうか迷ったら、先送りせずにその場で決めてください。迷っている状態がいちばん時間を食います。決め方は粗くて大丈夫で、直近三年の過去問に一度も出ていないなら閉じる、くらいで足ります。粗い基準でも、基準があるほうが手は速い。
捨てるものが四つ決まると、机の上に残る作業はぐっと減ります。少ないこと自体が、この時期は効きます。たしかに、捨てた分だけ心もとなさは残ります。それでも、選べる状態のほうが手は動きます。
間に合わない範囲は配点の薄いほうから削る
捨てるものを決めたら、次は範囲のどこを削るかです。使う物差しは三つあります。配点の厚さ、出題の安定性、そして自分の現在地。
まず配点の厚さは、過去問を三回分ならべると見えてきます。解く必要はありません。目次に、出た論点の印をつけていくだけです。三回とも印がついた場所が、あなたにとっての本命になります。
出題の安定性は、その印の並び方でわかります。毎回同じ形で出ている分野なら、対策の効きが読めます。一方、年によって形が変わる分野は、時間をかけても点が返るとは限りません。
三つ目の現在地が、いちばん見落とされます。
同じ一時間を使うなら、手つかずの分野をゼロから仕上げるより、五割できている分野を八割へ持っていくほうが点は動きます。ゼロからの分野は、用語を覚える段階で一時間が消えるからです。ところが半分できる分野なら、間違えた理由を潰す作業からすぐ始められます。
つまり、間に合わないときに優先すべきは、いちばん弱いところではありません。あと少しで取れるところです。ただ、これは感覚と逆になりやすい。だから意識して裏返してください。
手つかずの分野を全部捨てろ、という話ではないです。手つかずでも、配点が厚くて解き方の型が決まっている分野は拾えます。たとえば計算問題のように、手順を覚えれば同じ形のまま出るものがそれにあたります。
逆に、手つかずで、配点が薄くて、毎回形が変わる分野。ここが最初に削る場所です。
削ると決めたら、テキストの該当ページに付箋を貼って閉じてください。頭の中で「余裕ができたらやる」と保留にすると、その分野はずっと未確定のまま残ります。未確定は焦りの燃料になるので、物理的に閉じるほうが効きます。そこで、付箋を貼る作業は今日のうちに終わらせてしまうといいです。
削った分野は、紙に書き出して机の見えるところに貼っておくといいと思います。捨てたものが目に見えていれば、思い出すたびに悩み直さずにすみます。逆に頭の中だけへ置くと、夜中にまた出てきます。書いておけば、翌週に見直すときの材料にも使えます。
削る判断は、一度で終わらせなくて大丈夫です。一週間ごとに見直せば、伸びた分野と伸びなかった分野が入れ替わります。むしろ、最初の判断に縛られるほうが損をします。
量はこなしているのに点が伸びない人は、努力の向き先がずれている可能性もあります。ずっと勉強しても成績が伸びない…正しい努力の見直し方で、その辺りを整理しています。
頭が真っ白になる直前期の不安
ここからは、焦りのほうの話です。
直前期の不安は、残り日数に比例していません。比例しているのは、何が終わっていないのか言葉にできていない量のほうです。
試験まで三十日ある人と、二十日の人。焦りが強いのは、必ずしも二十日の側ではありません。二十日でも、やることが三つに絞れている人は落ち着いています。一方で三十日あっても、範囲全体がぼんやり残っている人は、机に座った瞬間に息が浅くなります。
だからさっきの削る作業は、勉強法であると同時に、不安への手当てにもなっています。捨てると決めた瞬間、頭の中の未確定な面積が減るからです。
焦りが夜に強くなるのも、同じ理屈で説明がつきます。そもそも夜は、確かめる手段がありません。
昼なら、テキストを開いて「思ったほど残ってない」と確認できます。ところが夜中の二時に湧いた不安には、確認する先がありません。行き先のない不安は、そのまま膨らみます。
そこで睡眠を削ると、翌日の判断力まで落ちます。厚生労働省のこころの耳(働く人の睡眠と健康)でも、睡眠と日中の状態のつながりが扱われています。つまり直前期に最初に削られるのが睡眠で、いちばん削ってはいけないのも睡眠、ということになります。
夜に不安が来たら、その場で範囲を数えないでください。数えても確かめられません。なので、翌朝の自分に渡すつもりで、気になったことを一行だけ書いて寝るほうが早いです。
もう一つ。間に合わない、という言葉を飲み込まないでほしいと思います。
間に合っていないのは事実です。事実を否定し続けるかぎり、否定するためのエネルギーを毎日払い続けます。それでも、声に出すか紙に書くかして、いったん認めてしまえば軽くなります。認めたうえで、当日の点を最大にする話へ移れます。
この時期にじわじわ効いてくるのが、人との比較です。同じ試験を受ける人の投稿を見ると、自分だけが遅れているように見えます。見えているのは、その人が進んだところだけです。終わっていない範囲を書く人は、あまりいません。比べる相手を当日の合格点だけにすると、視界がだいぶ静かになります。
焦りが完全に消えることは、たぶんありません。とはいえ、扱いようはあります。とりあえず机に座って、五分だけ手を動かす。それで戻る日もあれば、戻らない日もあります。戻らない日は、寝てしまってかまいません。
仕事でも似たことが起きているなら、原因が頑張り方ではなく進め方の側にあるかもしれません。締め切りに間に合わない原因は仕組みにあった!余裕で終わらせる方法が、そちら側の整理に使えます。
間に合わないと分かったうえで本番の日をどう過ごすか
残りが二週間を切ったあたりから、勉強の中身より、決めごとの数を減らすほうが効いてきます。
最終週に新しい分野へ手を伸ばさない、というのがその代表です。効果がないからではありません。しかし手を広げた瞬間に「まだこれもある」が復活して、それまで減らしてきた未確定の面積が戻ります。
持ち物も一冊に絞ってしまうといいです。さらに、当日に開くページへ先に印をつけておくと迷いません。会場で鞄から三冊出して迷う時間ほど、消耗するものはありません。
直前の詰め込みは意味がないと言われがちです。それでも入れ方によっては、当日に効きます。暗記が苦手で覚えられない…記憶に残る勉強法と復習のコツに、短い時間で入れるときの扱い方があります。
本番中のことも先に決めておきます。
資格試験の直前に間に合わなかった人がいちばん失点するのは、捨てたはずの分野が出た瞬間です。あるいは、解けそうで解けない問題に粘ってしまったときです。その場で固まって、五分溶かして、後半の解ける問題まで巻き込む。これが起きます。
なので、飛ばす基準を先に一つ決めておいてください。読んで三十秒手が動かなければ飛ばす、でいいです。基準があると、飛ばすことは判断になります。基準がなければ、飛ばすことは敗北になります。ここの差は当日かなり大きいです。
試験中に焦りが出たら、手を止めて息を吐くだけでも戻ります。吸うほうではなく、吐くほうを長くする。会場でできることは、それくらいしかありません。ただ、それくらいで足ります。
当日の朝にやることも、一つだけ決めておくと楽です。印をつけたページを頭から眺める。それ以上は増やさない。加えて、会場に着く時刻も先に決めておくと、朝の判断が一つ減ります。
前日にできることも、あらかじめ決めておくと迷いません。持ち物をそろえる。会場までの経路を一度だけ見る。あとは早めに寝る。新しい問題集は開かないと決めておくだけで、前日の夜がずいぶん楽です。
落ちたときの話も、先にしておくほうがいいと思います。
次の実施がいつかを調べて、メモしておく。それだけで、当日の「ここで人生が決まる」という感覚がだいぶ下がります。下がると、手が動きます。たしかに逃げ道を作ると弱くなるという言い方もありますが、直前期に関しては逆に働くほうが多い気がします。
試験の日は来ます。範囲が終わっていても、終わっていなくても、同じ時刻に始まります。だから終わっていない側で座ると決まったなら、その状態で最大の点を取る作戦に切り替える。残り一ヶ月の使い道としては、そのほうが合っています。
まとめ|捨てると決めた分だけ、直前期の焦りは小さくなる
ロジカル先輩の言い方を借りると、資格試験の直前にやることは二つでした。どこを捨てるか決めること。捨てた自分を責めないこと。
合格条件を数字で確認して、配点の薄いところから閉じる。そのうえで、あと少しで取れる分野に時間を寄せる。残ったものを紙に書いて、視界を狭くする。やることはそれくらいです。
間に合わないという感覚は、たぶん最後まで消えません。消さなくていいと思います。消すべきなのは、何が終わっていないのかわからない状態のほうですから。
モヤ子さんは、受ける試験の配点を確認するところから始めるそうです。三十分で終わる作業だそうです。その三十分が、残り一ヶ月の使い道を決めます。
よくある質問FAQ
Q. 資格試験の直前に間に合わないとき、受験を見送ったほうがいいですか。
A. 受験料と次回の実施時期を確認したうえでの判断になります。ただ、受けられる状態なら受けるほうを勧めたいです。本番を一度通ると、問題の出方や時間の感覚が体に入ります。そのため次に受けるときの勉強の精度が変わってきます。体調を崩している場合は別です。無理をして当日に倒れると、次回の準備まで遅れます。見送ると決めたなら「今回は受けない」と決めきるほうが、宙ぶらりんで一ヶ月過ごすより楽です。
Q. 捨てた分野が本番で出たら、どうすればいいですか。
A. 飛ばします。そのために事前に基準を決めておきます。捨てた分野に当たったとき、いちばん高くつくのは解けないことではなく、粘ってしまうことです。そもそも捨てると決めた時点で、その問題の点は計算に入っていません。つまり予定どおりの出来事なので、慌てる必要もありません。選択式なら勘で埋めて次へ進んでください。空欄より当たる可能性が残ります。
Q. 残り一ヶ月では、過去問と参考書のどちらを優先すべきですか。
A. 過去問です。参考書は、過去問で外した箇所を調べるために開く道具として使ってください。しかし順番が逆になると、読んだところが出るかどうかを運に任せることになります。また過去問を解くと、自分の現在地と配点の厚い場所が同時にわかります。この二つが直前期の判断材料なので、先に手に入れておくほど残りの日数を使い切れます。